労働者の居ない船
著 葉山嘉樹
北海道から横浜へ向かうおんぼろ船の、船員たちの運命。
- 原文:パブリックドメインの原作(冒頭部分)
- 逐語注釈と全文訳:英語・中国語、無料
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冒頭
こう云う船だった。
北海道から、横浜へ向って航行する時は、金華山の燈台は、どうしたって右舷に見なければならない。
第三金時丸――強そうな名前だ――は、三十分前に、金華山の燈台を右に見て通った。
海は中どころだった。凪いでると云うんでもないし、暴化てる訳でもなかった。
三十分後に第三金時丸の舵手は、左に燈台を見た。
コムパスは、南西を指していた。ところが、そんな処に、島はない筈であった。
コーターマスターは、メーツに、「どうもおかしい」旨を告げた。
メーツは、ブリッジで、涼風に吹かれながら、ソーファーに眠っていたが、起き上って来て、
「どうしたんだ」…
この本について
この書き出しは、故障したコンパスと腐食した船体を持つ旧貨船「第三金時丸」が、石炭を満載して三池港からマニラへ向かうさまを描いている。船を酔っ払いになぞらえた皮肉の効いた語り口で、戯れの中に船員たちの過酷な労働がにじみ出ている。
作者について
葉山嘉樹(1894年3月12日—1945年10月18日)は、日本のプロレタリア文学運動に関わった作家である。代表作に、貨物船での劣悪な労働条件を描いた1926年の小説『海に生くる人々』や、日本のプロレタリア文学の初期例とされる短編『淫売婦』(1925年)がある。
注釈の作り方
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よくある質問
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