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ある恋の話

著 菊池寛

妻の祖母が若い頃、歌舞伎役者に恋をした話。

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原文の言語:日本語レベル:中級3,148 字 · ≈ 13 分出典:青空文库

冒頭

私の妻の祖母は――と云って、もう三四年前に死んだ人ですが――蔵前の札差で、名字帯刀御免で可なり幅を利かせた山長――略さないで云えば、山城屋長兵衛の一人娘でした。何しろ蔵前の札差で山長と云えば、今で云うと、政府の御用商人で二三百万円の財産を擁しておろうと云う、錚々たる実業家に当る位置ですから、その一人娘の――尤も男の子は二人あったそうです。――祖母が、小さい時からお乳母日傘で大きくなったのは申すまでもありません、祖母の小さい時の、記憶の一つだと云う事ですが、お正月か何かの宮参りに履いた木履は、朱塗の金蒔絵模様に金の鈴の付いたものでしたが、おまけにその木履の胴が刳貫になっていて、祖母が駕籠から下り…

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この本について

この文章は、語り手の妻の亡き祖母の生い立ちを語るもので、裕福な札差の一人娘として溺愛されて育ちながら、十七歳で家の借金のために三十以上年上の豪商に嫁がされ、冷たい結婚生活の末、妊娠中に夫を急死で失うに至る経緯を描いています。ゆったりとした語り口で細部を丁寧に積み重ねていくため、古い家の歴史を聞き語りで聞いているような静かな読みごこちになります。

作者について

菊池寛(1888年12月26日-1948年3月6日)は、戯曲『珍珠夫人』や『父帰る』で名を成した日本の作家・出版人である。出版社文藝春秋と同名の月刊誌、日本文芸家協会、ならびに芥川賞と直木賞を設立し、大映映画(現・角川映画)の社長も務めた。

注釈の作り方

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