護持院原の敵討
著 森鷗外
江戸で殺された侍の遺族が、長い敵討ちの旅に出る。
- 原文:パブリックドメインの原作(冒頭部分)
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冒頭
播磨国飾東郡姫路の城主酒井雅楽頭忠実の上邸は、江戸城の大手向左角にあった。そこの金部屋には、いつも侍が二人ずつ泊ることになっていた。然るに天保四年癸巳の歳十二月二十六日の卯の刻過の事である。当年五十五歳になる、大金奉行山本三右衛門と云う老人が、唯一人すわっている。ゆうべ一しょに泊る筈の小金奉行が病気引をしたので、寂しい夜寒を一人で凌いだのである。傍には骨の太い、がっしりした行燈がある。燈心に花が咲いて薄暗くなった、橙黄色の火が、黎明の窓の明りと、等分に部屋を領している。夜具はもう夜具葛籠にしまってある。
障子の外に人のけはいがした。「申し。お宅から急用のお手紙が参りました」…
この本について
この一節は、姫路藩士・山本三右衛門が江戸の上屋敷の金部屋で宿直していたところ、白紙の手紙を届けに来た男に不意打ちされ、重傷を負いながら犯人に逃げられる場面から始まり、遺族の長い仇討ちの発端を描く。静かな明け方の宿直室の描写から突然の凶行へと場面が急転し、緊張感と冷たさの漂う読み味となっている。
作者について
森鷗外(1862年2月17日—1922年7月8日)は、本名を森林太郎といい、日本の陸軍軍医総監であり、翻訳家・小説家・詩人でもあり、作家森茉莉の父である。若くして医師免許を取得し、ドイツ文学の翻訳を日本に紹介し、代表作『雁』(1911—1913)により、日本文学の近代化を主導した作家の一人とされている。
注釈の作り方
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よくある質問
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