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尾生の信

著 芥川龍之介

尾生は橋の下で女を待ち続ける。潮は少しずつ満ちてくる。

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原文の言語:日本語レベル:中級1,632 字 · ≈ 7 分出典:青空文库

冒頭

尾生は橋の下に佇んで、さっきから女の来るのを待っている。

見上げると、高い石の橋欄には、蔦蘿が半ば這いかかって、時々その間を通りすぎる往来の人の白衣の裾が、鮮かな入日に照らされながら、悠々と風に吹かれて行く。が、女は未だに来ない。

尾生はそっと口笛を鳴しながら、気軽く橋の下の洲を見渡した。

橋の下の黄泥の洲は、二坪ばかりの広さを剰して、すぐに水と続いている。水際の蘆の間には、大方蟹の棲家であろう、いくつも円い穴があって、そこへ波が当る度に、たぶりと云うかすかな音が聞えた。が、女は未だに来ない。

尾生はやや待遠しそうに水際まで歩を移して、舟一艘通らない静な川筋を眺めまわした。…

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この本について

この一節は、尾生が橋の下で恋する女を待ち、潮が少しずつ満ちていく様子を描いています。静かな自然描写が徐々に緊迫感を高め、待ち続ける男の姿を落ち着いた筆致で浮かび上がらせます。

作者について

芥川龍之介(1892年3月1日-1927年7月24日)は、澄江堂主人の号でも知られる大正期の日本の作家で、「日本短編小説の父」とされている。35歳でバルビタールの過量服用により自殺し、日本の主要な文学賞である芥川賞は彼の名前にちなんでいる。

注釈の作り方

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この本は「中級」です。すべての語に注釈があるので、語彙が少なくても読み進められます。

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