絵本の春
著 泉鏡花
雪解けの城下町、荒れた土塀に幼い日の春がよみがえる。
- 原文:パブリックドメインの原作(冒頭部分)
- 逐語注釈と全文訳:英語・中国語、無料
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冒頭
もとの邸町の、荒果てた土塀が今もそのままになっている。……雪が消えて、まだ間もない、乾いたばかりの――山国で――石のごつごつした狭い小路が、霞みながら一条煙のように、ぼっと黄昏れて行く。
弥生の末から、ちっとずつの遅速はあっても、花は一時に咲くので、その一ならびの塀の内に、桃、紅梅、椿も桜も、あるいは満開に、あるいは初々しい花に、色香を装っている。石垣の草には、蕗の薹も萌えていよう。特に桃の花を真先に挙げたのは、むかしこの一廓は桃の組といった組屋敷だった、と聞くからである。その樹の名木も、まだそっちこちに残っていて麗に咲いたのが……こう目に見えるようで、それがまたいかにも寂しい。…
この本について
雪が消えた故郷の荒れた土塀沿いの桃の小路を描いた文章で、昼はほとんど人通りがないのに、黄昏どきには遠くのはずの花見帰りの足音がはっきり聞こえるように感じられる。現実の景色と幻のように見える光景が重なり、静けさのなかに寂しさの滲む読み心地である。
作者について
泉鏡花(本名・泉鏡太郎、1873年11月4日-1939年9月7日)は、戦前期に活動した日本の小説家・作家・歌舞伎劇作家である。江戸時代の文芸に影響を受けた超自然的な物語を好むロマンティシズムで知られ、近代日本文学を代表する文体家の一人とされる。
注釈の作り方
逐語注釈と全文訳は AI モデル(DeepSeek、智譜 GLM)が文脈に合わせて生成し、すべての語に注釈があるか自動で確認しています。AI は誤ることがあります。問題は本のページから報告できます。
よくある質問
原文ですか?
はい。パブリックドメインの原作の冒頭部分を収録しています(青空文库)。
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どのレベル向け?
この本は「上級」です。すべての語に注釈があるので、語彙が少なくても読み進められます。
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